コラム

逆引きマーケ Vol.8:
名前は未来への宣言

2026/07/17

先日、ある地域メディアの方とお話をする機会がありました。

話していてとても楽しい方で、その方は、こんなことをおっしゃいました。

「媒体を持つって強いですよ。どこでも、誰にでもコンタクトできますから。」

そのメディアは、地域のお店やイベント、人の活動などを紹介する記事が中心です。

それなのに、名前には「経済新聞」とあります。

最初は少し不思議でした。

地域の出来事を伝えるなら、「地域新聞」でもよいのではないか。

そんなことを思ったのです。

でも、考えているうちに気づきました。

「経済」とは、株価や企業の決算だけではありません。

新しいお店ができること。

地域でイベントが開催されること。

地元企業が新しい挑戦をすること。

それらもすべて、地域の経済を動かしています。

つまり、その名前は記事の内容を説明しているのではなく、

「私たちは、地域の経済活動を伝えるメディアです。」

という立場を表しているのではないでしょうか。

なるほど。

そう考えると、「研究所」「ラボ」「アトリエ」「工房」といった名前も同じです。

実際の業務内容を説明しているというより、

「私たちは、こんな考え方で価値を生み出しています。」

という姿勢や世界観を表しているように思えます。

一方で、創業したばかりの会社では、社名や商品名を考えるとき、

「〇〇製作所」「〇〇加工業」「〇〇除去剤」

というように、仕事内容や商品の機能をそのまま名前にすることがあります。

もちろん、それが悪いわけではありません。

何をしている会社なのかが伝わることは、とても大切です。

でも、その一歩先を考えてみてもいいのではないでしょうか。

私たちは、自分たちの仕事は一生懸命説明します。

でも、

「この会社は、どんな考え方で仕事をしている会社なのか。」

そこまで伝えられているでしょうか。

マーケティングとは、商品を売る技術ではありません。

「どう見られたいか」を考えることなのかもしれません。

だからこそ、社名や商品名は、機能を説明するだけではなく、

「どんな価値を届けたいのか。」

「どんな会社として覚えてもらいたいのか。」

「どんな存在として社会に貢献していきたいのか。」

そんな想いまで込めて考えてみる価値があります。

振り返ってみると、私自身も知らず知らずのうちに、そんなことをしていました。

「マーケターズラボ・マサオフィス」という名前も、Web制作会社という肩書きではなく、お客様と一緒に考え、一緒に育てる存在でありたいという想いから生まれました。

そのときは、特別にマーケティングを意識したり、フレームワークを並べたわけではありません。

でも今思えば、それも「知らずにやっていたマーケティング」。

「逆引きマーケ」だったのかもしれません。

社名も、商品名も、肩書きも。

正解は一つではありません。

でも、一つだけ言えることがあります。

名前は、過去を説明するためにつけるものではありません。

未来に向かって、「私たちは、こんな存在になりたい」と宣言するものなのだと思います。

◆筆者:辻 正雄

デジタジオ株式会社(ビジコン運営)代表
株式会社アーティストユニオン代表
経営者に寄り添うマーケター:マサオフィス