コラム

逆引きマーケ Vol.11:
最新マーケティングの最後は「もしもし」だった。

2026/08/28

仕事柄、マーケティング関連のサービスを調べることがあります。

MA、SFA、CRM、メールマーケティング、リードジェネレーション……。

昔に比べれば、本当にいろいろなツールやサービスが登場しました。

「これは面白そうだな」

そう思って、Webサイトから資料をダウンロードします。

すると、電話が鳴ります。

「先ほど資料をダウンロードいただきまして……」

早いです(笑)。

場合によっては、その日のうちに何度か電話が来ます。

そこで、ふと思いました。

あれ?

これ、昔やっていたリスト営業と、そんなに変わらないんじゃないでしょうか。

昔は名簿を片手に、上から順番に電話をかけていました。

今は、Webサイトを訪問した人、資料をダウンロードした人、メールを開封した人などをデータで抽出し、「確度の高いリード」として電話します。

もちろん、精度はまったく違います。
だから昔と同じだ、と言うつもりはありません。

むしろ、昔の営業からすれば、誰が何に興味を持っているのかが分かるのですから、ずいぶん便利になったものです。

でも、最後にやっていることは、
「もしもし、先ほど資料をダウンロードいただきまして……」
だったりします(笑)。

なんだか、ちょっと面白いです。

MAを使って見込み客を育成します。
SFAを使って営業活動を効率化します。
ファネルを設計して、見込み客がどの段階にいるのかを把握します。

図にすると、ものすごくきれいです。
認知 → 興味 → リード → 育成 → 商談 → 成約

でも、実際の人間は、そんなにきれいにファネルを降りてくれません。

資料をダウンロードしたけれど、単に勉強したかっただけかもしれません。
比較検討していたけれど、突然予算がなくなるかもしれません。
「いいですね」と言っていた担当者が異動するかもしれません。
逆に、半年間何の反応もなかった人から、突然電話が来るかもしれません。

人間はファネルの図の通りには動きません。

私も経営者のはしくれです。
マーケティングも営業も、ずっとやってきました。

そして今でも思います。
営業ほど難しいものはありません。

もし、ツールを入れて、きれいなファネルを描いて、その通りに見込み客が流れてきて、最後に成約してくれるのなら、こんなに楽なことはありません。

それができれば、すべての会社が成長するでしょう。
日本経済だって、もっと良くなっているかもしれません(笑)。

でも、世の中はそんなに甘くありません。
人には、それぞれ事情があります。
会社にも、それぞれ事情があります。
予算、タイミング、人間関係、社内政治、担当者の気持ち。
データにはなかなか表れないものが、商談を動かしたり、止めたりします。

だからこそ、最新のマーケティングツールを売っている会社も、資料請求が入れば電話します。
そして、つながらなければ、また電話します。

そう考えると、MAやSFAは営業をなくすためのものではなく、人間が営業するために、少しだけ確率を上げてくれる道具なのかもしれません。

最後に相手の話を聞くのも人間です。

「今じゃないな」と感じるのも人間です。

もう少し話してみようと思うのも人間です。

そして、「この人から買おう」と決めるのも人間です。

なんだ、最後は人間なんですね。

私はそれを少し可笑しく思いながら、

同時に、どこか安心している自分もいます。

◆筆者:辻 正雄

デジタジオ株式会社(ビジコン運営)代表
株式会社アーティストユニオン代表
経営者に寄り添うマーケター:マサオフィス